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「AI画像、うちも使っていい?」と聞かれたら──やめたほうがいい場合が、はっきりあります

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「ホームページの写真、AI で作れば安く済みますよね」

そう聞かれることがあります。事実、安いし速い。素材サイトを探して、ライセンスを確認して、という手間もありません。

ただ——やめたほうがいい場合が、はっきりあります。そして、その線引きは「AI だから危ない」という単純な話ではありませんでした。

事例を並べていくうちに、思っていたのと違う結論に行き着いたので、その過程ごと書きます。


まず、国内で何が起きているか

ここ 2 年ほどで報じられた主な事例です。

企業・組織何が起きたか
JAL(2025 年 8 月)富裕層向けクレジットカードのサイトで、ポップコーンにストローが刺さっているなど不自然な AI 画像を使用。広報が謝罪し、全て取り下げ
ワコム(2024 年)「描く道具」のメーカーが公式 SNS で AI 画像を投稿。主要顧客であるクリエイターから猛反発
海上保安庁(2024 年)パンフレットのイラストが特定のイラストレーターの画風に酷似していると批判され、公開中止
ウテナ(2026 年)AI で制作したアニメ動画が既存作品に類似と批判され取り下げ。外部専門家のリーガルチェックは通っていた
陸上自衛隊のある部隊(2026 年)AI 制作のロゴを公開したが、3 日で取り下げ
神戸風月堂(2025 年 8 月)SNS 投稿に使った AI 画像に批判が集中
サクラクレパス海外イベントのポスターに AI 疑惑。取り下げと謝罪
集英社(2023 年)AI 生成モデルの写真集を、発売後に販売終了

これだけ並ぶと「やっぱり AI 画像は危ない」と思いたくなります。でも、そう単純ではありませんでした。


決定的だったのは、この 1 件

**花王の入浴剤「バブ」**のパッケージに使われたイラストが、「AI 生成ではないか」と指摘されて炎上しました。

同社は「独自のイラストであり、生成 AI ではない」と説明しています。

つまり——人間が描いたのに、炎上した。

この 1 件が示していることは重いと思います。

問題は「AI を使うこと」ではなく、「AI を使ったように見えること」に移っている。

もはや、使っていないことすら証明を求められる段階に来ている。これは、AI 画像を使う・使わないという判断の枠を超えた話です。


これは、数字にも出ています

私の観察で終わらせないために、調査結果を確認しました。思っていた以上に、はっきり出ていました。

最大 7 割が、実写の広告を「AI 画像」と誤認する

ビデオリサーチの研究所が 2026 年 5 月に公表した検証結果です。

検証項目結果
実写広告を「AI 画像広告」と誤認した割合最大 7 割
「AI 画像広告だ」と認識された広告購入・利用喚起スコアが低下

花王の件は、例外ではありませんでした。実写で撮った広告が、7 割の人に「AI で作ったもの」と思われる。そういう段階に来ています。

そして重要なのは 2 行目です。AI かどうかではなく、「AI だと思われたかどうか」で、購入意欲のスコアが下がる。

この研究所は、示唆としてこう述べています。

実写広告を用いる場合には、「実写であること」をあえて明示・強調することが、差別化要素として有効に働く可能性がある。

つまり——撮った写真に「これは実写です」と書く時代になりつつある、ということです。

生活者が何を懸念しているか

同じ調査で、生成 AI の広告利用に対する意識も聞いています。

評価割合
同じような広告ばかりになりそう(無個性化)29.6%
先進的だ24.5%
柔軟な考えだ23.2%
手を抜いていると感じる20.2%
品質や信頼性に不安がある19.9%

「手を抜いていると感じる」が 2 割。 JAL の件で指摘された「チェックが甘そうに見える」が、そのまま一般的な感覚として出ています。

一方で「先進的だ」「柔軟な考えだ」も 2 割強あり、受け止め方は一様ではありません。ここは正直に書いておきます。

抵抗感は、賛成をやや上回る

インターネット広告の業界団体が 2025 年に実施した調査では、こうなっています。

  • 生成 AI を活用した広告に**「抵抗感がある」約 37%** /「抵抗感がない」22%
  • ただし若年層(15〜34 歳)は抵抗感が少ない傾向
  • AI で作成したと明記した場合、「抵抗感が薄れる」33.8% /「薄れない」29.1%

3 つ目が実務的に効きます。明記すると、やや受け入れられやすくなる。隠すより、言ったほうがいい。

そして、印象と是非は別

2026 年 8 月に公表された調査では、生成 AI 広告への印象は 57.6% がネガティブ。一方で、企業が使うことの是非については「積極的に活用すべき」4.3%、「条件が整えば活用してよい」52.0% と、半数以上が条件付きで容認しています。

つまり生活者は、**「印象は良くないが、使うこと自体を否定はしない」**という位置にいる。

問われているのは、使うかどうかではなく、条件のほうです。


炎上した企業に共通していたこと

事例を分析している専門家の指摘が、的確でした。

AI 炎上の多くは「AI の失敗」ではなく「企業判断の失敗」である。

JAL の件について、こう分析されています。

JAL は、安全性・信頼性・ブランド価値を非常に重視される存在。しかも年会費を伴う高価格帯のカードのプロモーションだった。その文脈で「どこか雑に見える」「チェックが甘そうに見える」という印象を与えてしまったことが致命的だった。

AI 画像の細部の違和感が、企業姿勢そのものへの不信につながった。

ワコムの件も同じ構図です。「人の創作を支える」ことを掲げる会社が AI 画像を使った——理念と行動の矛盾が批判された。技術の問題ではありません。

つまり共通点は、こうなります。

表面的な原因実際に問われたこと
AI 画像が不自然だったチェックしていないように見えた
AI 画像を使った自社の理念と矛盾していた
既存作品に似ていた他人の仕事への敬意が疑われた

どれも、AI そのものへの批判ではありません。


法的リスクの現在地

「法的にセーフなら大丈夫では」と思うかもしれません。そこも確認しました。

日本では、生成 AI の著作権侵害に関する確定判決はまだ出ていません(2026 年時点)。ただし状況は動いています。

  • Disney と Universal が Midjourney を提訴(2025 年 6 月)、Warner Bros. も追随(同年 9 月)
  • Getty Images も提訴。生成画像に同社の透かしが残っていたことが証拠として注目された
  • 文化庁が新ガイドラインを公表(2025 年 12 月)。既存著作物との類似性の判定基準が明確化された
  • EU では AI 法の施行により、学習データの透明性要求が厳格化

そして——ここがいちばん重要です

先ほどのウテナの事例は、外部の専門家によるリーガルチェックを経たうえで公開されていました。法的には問題ないと判断されていた。それでも炎上し、取り下げになった。

法的に問題がないことと、炎上しないことは、別の話です。


業種によって、危険度がまったく違う

事例を並べると、明確な二極化が見えます。

危険度が高い比較的受け入れられている
航空・金融・医療(安全性と信頼性が売り)テクノロジー系
「作ること」を売りにしている業種ファッション(先進性の象徴として)
高価格帯・高級路線の商材実験的な取り組みだと明示している場合
士業・医療など、正確性が問われる仕事

2 行目が特に重要です。ワコムが叩かれたのは、道具のメーカーだったから。同じことをテック企業がやっても、たぶん問題になりませんでした。

歯科医院、工務店、設計事務所、士業——「人の手による仕事」を売っている会社は、この列の上側にいます。


炎上しなくても、その画像は機能していない

ここまで炎上の話をしてきましたが、もっと日常的で、もっと多くの会社に当てはまる問題があります。

「うちは炎上するような業種じゃない」という会社にも、これは起きます。

AI が作った典型的なイラストは、そもそも情報が伝わりにくい。

これは好き嫌いの話ではなく、絵の構造の問題です。

人が描いた絵には、密度の偏りがある

人が何かを描くとき、大事だと思っているところに線が集まります。そして、どうでもいいところは省略される。

顔を描くなら目のあたりに線が集中して、背景は数本の線で済ませる。図解を描くなら、説明したい部分を大きく描いて、周辺は小さくする。

この密度の偏りが、そのまま「どこを見ればいいか」の案内になります。デザインでは視覚的階層と呼ばれるものですが、手で描くと、意識しなくてもこれが生まれます。描き手が何を大事だと思ったかが、線の量に出るからです。

AI が作る絵は、密度が均一になりやすい

一方、生成された画像はどこも同じくらい描き込まれていることが多い。

背景も、主題も、小物も、同じ精度で描かれている。省略がない

すると何が起きるか。見る側に、案内がない。どこから見ればいいのか、何が大事なのかが分からないので、視線が迷います。

そして人は、迷ったら読むのをやめます

つまり——情報を伝えるために画像を置いたのに、置いたことで読まれなくなる。これが起きます。

これも、実験で出ています

消費者の脳の反応を調べた研究が報告されています。そこで出た評価が、この話とそのまま重なります。

消費者は AI が生成した広告を、そうでない広告に比べて「著しく煩わしく、退屈で、紛らわしい」と評価した。

「紛らわしい(confusing)」——これが、いま書いた「視線が迷う」に当たる部分だと思います。

そしてもう一点、示唆的な結果があります。

消費者がすぐに「AI 製だ」と認識しなかった唯一の広告は、広告制作のプロがかなりの反復編集を経て作成したものだった。

そのまま出すと分かる。分からなくするには、プロが何度も手を入れる必要がある。 つまり「安くて速い」という前提が、その時点で崩れます。

だったら、コピー用紙に殴り書きしたほうがいい

極端に聞こえるかもしれませんが、実感としてはこうです。

同じ時間で手書きの図をコピー用紙に描いて貼ったほうが、伝わります。

理由は 2 つあります。

1. 省略があるから、何が大事か分かる

手で描くと、時間の都合で省略が入ります。そして人は、大事なところから描く。だから自然に、大事なところだけが残る。それが案内になります

2. 「自分のために描かれた」と読める

これも大きい。手書きの図は、その場・その相手のために描かれたことが一目で分かります。AI 画像は、誰に対しても同じものが出せる。受け手は、その違いを感じ取ります

営業資料でも、患者への説明でも、社内の共有でも——きれいだが誰にでも配れる絵より、粗いがその場で描かれた絵のほうが、心証が良い。これは多くの人が経験的に知っていることだと思います。

つまり、リスクだけの問題ではない

まとめると、AI 画像には 2 つの別々の問題があります。

問題
炎上リスク業種と文脈による。当てはまらない会社も多い
伝わらない業種に関係なく起きる

そして 2 つ目のほうが、日常的で、静かで、気づかれにくい。炎上は分かりますが、「読まれなかった」は数字にも出ません。


では、どう判断するか

やめたほうがいいかどうかを、4 つで判断できます。

1. その画像は、誰の目に触れるか

社内資料や、企画の検討段階のたたき台なら、問題ありません。むしろ使うべきです。速いので。

危ないのは、外に出す最終物。ホームページ、パンフレット、SNS、広告。ここは慎重に。

2. 自社が売っているものと、矛盾しないか

いちばん大事な問いです。

「丁寧さ」「手仕事」「専門性」「人が対応すること」を売りにしているなら、AI 画像は自社の主張を裏切ります。

歯科医院が「一人ひとりに向き合う医療」を掲げながら、待合室のポスターが AI 画像だったら。読み手は、言葉と行動の矛盾を感じます。

3. 細部まで、実際に確認したか

JAL の件は、ポップコーンにストローが刺さっていたという話です。

AI 画像は、一見それらしく見えるのに、細部が壊れている。そして作った本人は、それに気づきにくい。手の指、文字、道具の持ち方、物の数——ここを人が見る工程を飛ばすと、事故ります。

4. 既存の作品に似ていないか

これは自分では判断が難しい部分です。海上保安庁の件のように、特定の作家の画風に似てしまうことがあります。

画像検索で似た絵がないかを確認する、というのが最低限の対処です。

おまけ:5 秒見て、目がどこへ行くか

上で書いた「密度」の話を、簡単に確かめる方法があります。

その画像を 5 秒だけ見て、自分の目がどこへ行ったかを覚えておく。

行き先が定まらない、あるいは「全体をぼんやり見た」で終わるなら、その画像は案内として機能していません。読み手も同じことになります。


私たちの場合

自分たちがどうしているかも、書いておきます。

このブログの記事の先頭に付いている画像は、AI に絵を描かせたものではありません。 コードで図形と文字を配置して、描いています。

なぜそうしているか。理由は 3 つです。

  • 既存の作品を学習していないので、似てしまう心配がない——四角と線と文字だけなので、構造的に起こりません
  • 記事の内容を、正確に図にできる——「ファイル名が 4 つ並んでいて、全部に『最新』と書いてある」のような図は、AI に描かせるより、座標で指定したほうが速くて正確です
  • 密度を、こちらで決められる——大事な部分を明るく大きく、補足を暗く小さく。上で書いた視覚的階層を、意図して作れる
  • 修正が効く——数字を変えたければ、その行を書き換えるだけ

つまり倫理的な理由というより、実務的な理由です。図を描くなら、そのほうが速くて正確だった。

ただ結果として、AI 画像を使う判断そのものを、しなくて済んでいます


それでも、使っていい場面はある

否定だけして終わるのは不誠実なので、書いておきます。

  • 社内資料、検討中のたたき台——外に出ないなら、速さの恩恵が大きい
  • AI 利用を明示している場合——実験的な取り組みだと分かる形なら、受け止められ方が変わります
  • 抽象的な図解・背景素材——人物や作風が問題になりにくい領域
  • 業種として許容されている場合——上の表の右側

要は、**「使うな」ではなく「どこで使うかを間違えるな」**という話です。


まとめ

  • 国内では AI 画像による炎上が続いている。JAL、ワコム、海上保安庁、ウテナ、陸自、神戸風月堂、集英社など
  • ただし共通点は「AI を使ったから」ではない。「雑に見えた」「理念と矛盾した」「他人の仕事への敬意が疑われた」
  • 花王のケースは、人間が描いたのに AI 疑惑だけで炎上した。問題は「AI を使うこと」から「AI を使ったように見えること」に移っている
  • これは数字にも出ている。実写広告の最大 7 割が「AI 画像」と誤認され、「AI だ」と認識された広告は購入・利用喚起スコアが低下する
  • 生活者の懸念は無個性化 29.6%/手を抜いていると感じる 20.2%/品質や信頼性に不安 19.9%。一方で「先進的」24.5% もあり、受け止めは一様ではない
  • AI で作成したと明記すると、抵抗感はやや薄れる(33.8% 対 29.1%)。隠すより言ったほうがいい
  • 日本ではまだ確定判決がないが、Disney・Warner・Getty の訴訟、文化庁のガイドラインと、状況は動いている
  • そしてウテナはリーガルチェックを通したうえで炎上した。法的にセーフでも、炎上はする
  • 業種で危険度が違う。「作ること」「人の手」を売りにしている業種は、特に危ない
  • そして炎上とは別に、業種に関係なく起きる問題がある。AI 画像は密度が均一になりやすく、どこを見ればいいかの案内がない。結果、置いたことで読まれなくなる
  • 同じ時間でコピー用紙に手書きしたほうが伝わることがある。省略があるから何が大事か分かるし、「自分のために描かれた」と読めるから
  • 実験でも、AI 生成広告は「煩わしく、退屈で、紛らわしい」と評価されている。そしてAI 製だと気づかれなかった唯一の広告は、プロが何度も手を入れたものだった。「安くて速い」という前提が、そこで崩れる
  • 判断は 4 つ。誰の目に触れるか/自社の主張と矛盾しないか/細部を確認したか/既存作品に似ていないか

「AI 画像を使うかどうか」で悩んでいるなら、問いを変えたほうがいいと思います。

その画像は、うちが売っているものと、矛盾していないか。

ここに引っかかるなら、安くても速くても、使わないほうがいい。削られるのは画像の質ではなく、会社の信用のほうです。

Acetyl:Tech は、AI をどこに使い、どこに使わないかの判断から支援しています。 「使いたいけれど、うちで大丈夫か分からない」というご相談も承ります。お気軽にどうぞ


出典・参考

調査データ

※ 法的な判断が必要な場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。本記事は報道および公表資料の整理であり、法的助言ではありません。

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