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AIで作った画面に、手書き時代の人月を払っていませんか──高い人月にも、安いバイブコーディングにも、同じ3つの質問を

見積もり人月バイブコーディングシステム開発発注AI導入経営者向け中小企業

先日、取引先が受けた業者の営業に、同席させてもらいました。

顧客向けのサイトを作る話で、見積もりは3か月・100万円前後。人月を積み上げた、昔ながらの形でした。

画面を見た瞬間に、分かったことがあります。これは、AIに作らせた画面だ。 画面の作りに、私が毎日使っているAIの癖が、そのまま出ていた。

証拠は他にもありました。無料の試作が、驚くほど早く出てきた。修正も、驚くほど早かった。手で書いていたら、その速さは出ません。そして、プレゼンをした人は、最新のAIや流行りの技術の話は流暢だった。基本的な技術の話は、そうではなかった。

つまりこういうことです。作るのはAIで、値段と日程は手書きの時代のまま。 そして、AIが書いたものを検証できる人が、その場にいるようには見えなかった。

社名は伏せます。許可を取っていないので、業者も取引先も特定できる情報は書きません。ただ、この形はこれから増えます。この記事は、その見分け方です。


「AIで作った」は、悪いことではない

先に言っておきます。AIに作らせること自体は、問題ではありません。

AIに言葉で指示して、コードを書かせ、動かして、直させる。この作り方は「バイブコーディング」と呼ばれていて、仕事で使うための8つのコツという記事で詳しく書きました。うちも、その作り方です。 このサイトも、お客さんに納めているものも、AIと一緒に作っています。

だからこの記事は、「AIで作る業者に注意」ではありません。AIで作っているのに、値段の単位が手書きのままの業者と、AIで作って安いが、検証を省いている業者の、両方に注意、という話です。そして後者は、うちにも当てはまり得る。同じ質問を、うちにもしてください。


大手は、自分でこう言っている

「AIで作っているはずだ」と推測する必要は、実はありません。大手が、自分で公表しているからです。

  • NTTデータは、AI駆動開発を500件のプロジェクトに適用し、2027年度に開発工程全体で70%の生産性向上を目標にする、と自社のタイアップ記事で言っています(日経クロステックの報道では「27年度に40%効率化」)
  • 日立は2026年7月、SIサービスの全工程にAIエージェントを置き、2027年度に生産性30%向上を目指すと発表しました。社内試験では、要件定義で最大240倍、設計からテストで約200倍だった、と
  • TISは、2030年度に生産性50%向上が目標で、一部の案件では既に「納期や人月を半減させる水準」に達している、と決算で説明しています
  • 富士通は「生産性100倍」という見出しの記事を出しています。要件定義から結合テストまでをAIエージェントが自律的にやる、社内の実践の数字だそうです

ここで大事なのは、公表している数字の大きさではありません。どの社も、これが見積もりにどう反映されるかを、一言も公表していないことです。生産性は言う。価格は言わない。

だから、聞いていい。「御社が公表している効率化は、この見積もりの人月に、どう反映されていますか」。


人月は、何の単位だったのか

人月というのは、「人が1か月、手を動かす」という単位です。1人月は役割によって60万〜130万円くらいと言われます。

手書きの時代、この単位はよく働いていました。画面を10枚作るなら、1枚あたりの手間がだいたい決まっていて、人月に換算できた。手間と成果が、だいたい比例していたからです。だから発注する側は、人月の数字を見れば、出てくるものの見当が付いた。

AIが入ると、ここが崩れます。同じ1人月で、ある業者は試作を3本出し、別の業者は手で1本書く。同じ1人月で、ある業者はAIが書いたものを人が検証し、別の業者は動いた瞬間に納める。手間と成果の関係が、業者ごとにバラバラになった。

人月が測っていたもの。左「手書きの時代」:1人月の手間と成果がだいたい比例していたので、人月を見れば成果の見当が付いた。右「AIの時代」:同じ1人月で、業者Aは試作3本、業者Bは手書き1本、業者Cは検証込み�で1本。手間と成果の比例が業者ごとに違うので、人月の数字から成果が読めない。

つまり、人月が悪くなったのではなく、人月から読み取れる情報が減った。冒頭の営業に戻ると、「3か月・100万円」という数字は、AIで作るなら何をする時間なのか、手で書くなら何を書く時間なのか、どちらとも読めない。読めない単位で、払うことになる。


「AIだから安いはず」も、言えない

では逆に、「AIで作るなら半額のはずだ」と言えるか。言えません。

2025年7月、AIの能力を測る研究機関METRが、無作為化試験の結果を出しました。経験あるオープンソース開発者16人に246の作業をしてもらい、AIを使える回と使えない回を無作為に分けた。結果、AIを使うと19%遅くなった。しかも本人たちは、始める前に「24%速くなる」と予想し、終わった後も「20%速くなった」と思っていた。感覚と実測が、逆だった。

2026年2月の続報では、「たぶん今は速くなっているが、うちのデータは弱い証拠にしかならない」という慎重な言い方をしています。

業者の「100倍」「半減」と、独立した試験の「遅くなった」が、同時に存在している。どちらが御社の案件に当てはまるかは、業者ごと・案件ごとに違うとしか言えません。だから「AIだから安いはず」と値切る根拠にはならないし、「AIでも手間は変わらない」と人月を通す根拠にもならない。聞かないと、分からない。


逆側の注意:安いバイブコーディングの中身

高い人月の話をしましたが、安いほうにも同じ問題があります。

セキュリティ会社Veracodeが、150以上のAIモデルにコードを書かせて検査しています。2026年3月の更新では、セキュリティの指示を与えずに書かせたコードの45%に、既知の脆弱性があった。しかもこの数字は、2年間ほぼ改善していない。書ける量は増えたのに、書いたものの安全性は横ばい、ということです。

これはAIが悪いという話ではなく、AIが書いたものは、指示と検証で品質が決まるという話です。指示を与え、書いたものを検証する。その手間は、AIを使っても残る。

だから、安い見積もりを見たときの問いは「なぜ安いか」です。AIで書く時間が減ったから安いなら、健全です。検証の時間を削ったから安いなら、その分は納品後に御社が払います。 直せない、監査に通らない、運用に人手が要る——8つのコツの記事で書いた通りです。

冒頭の営業は、値段は手書きの時代で、検証は薄そうだった。一番まずい組み合わせです。


どちらにも、同じ3つの質問

ここまでを、質問3つにまとめます。高い見積もりにも、安い見積もりにも、うちにも、同じものを。

業者に聞く3つの質問。①この人月は、何をする時間ですか——良い答え「要件の詰めに0.5、実装に1、検証とテストに1」。悪い答え「一式です」。②AIをどの工程で使い、効率化を見積もりにどう反映しましたか——良い答え「実装はAIで、その分を検証に回しています」。悪い答え「使っていません」(試作の速さと合わない)。③AIが書いた部分を、誰が・何を・どう検証しましたか——良い答え「担当者名、テストの項目、脆弱性検査の結果」。悪い答え「動作確認済みです」。

① この人月は、何をする時間ですか。 良い答えは、内訳が出ること。「要件の詰めに0.5人月、実装に1、検証とテストに1」のように。悪い答えは「一式です」。開発費用の6つの要因の記事で書いた通り、内訳が出ない見積もりに根拠はありません。

② AIをどの工程で使い、公表している効率化を、見積もりにどう反映しましたか。 良い答えは、使う工程と、浮いた分の行き先が言えること。「実装はAIで、浮いた時間は検証に回しています」なら健全です。悪い答えは「使っていません」——試作の速さと合わない場合。もう一つの悪い答えは、答えに詰まること。冒頭の営業は、こちらでした。

③ AIが書いた部分を、誰が・何を・どう検証しましたか。 良い答えは、人の名前と、検査の項目と、結果が出ること。悪い答えは「動作確認済みです」。動くことと、安全なことと、直せることは、別です。

3つとも答えられる業者なら、人月でもAIでも、値段が高くても安くても、たぶん大丈夫です。答えられない業者は、値段にかかわらず、何を買うのか分かりません。


見積もりの取り方を、少し変える

質問に加えて、取り方も変えられます。

人月ではなく、成果物の単位で取る。 「この機能一式でいくら」「この画面10枚でいくら」。人月で出てきたら、成果物単位に直してもらう。手間の単位から、成果の単位へ。AI時代に読めるのは、こちらです。

同じ要件を、複数に出す。 1社だと、100万円が高いのか安いのか、判断のしようがありません。3社に同じ要件を出せば、内訳と答え方の差が見えます。

保守と、ソースの所有を、先に決める。 納品後に誰が直すのか。ソースコードは御社のものになるのか。AIで作ったものは、作った本人以外には構造が分かりにくいことがあります。ここを決めていないと、安く作って、直すたびに高く払う形になります。


この記事が、当てはまらないとき

  • 基幹系の大規模案件。 何十人が何年も関わる案件では、人月はまだ意味のある単位です。この記事の話は、数百万円までの、画面と仕組みを作る案件が中心です
  • 業者が最初から「AIで作ります。その分こうです」と言っている場合。 それは健全な業者で、この記事の対象ではありません
  • 試作が早いこと自体を、疑わないでください。 早いのは、AIを使えている証拠です。疑うのは、早さと値段と検証が、噛み合っているかどうかです

まとめ

作るのはAI、値段は手書きの時代、という見積もりが、これから増えます。大手は生産性の数字を公表していて、価格への反映は公表していない。人月は手間の単位で、AIで手間と成果の関係が業者ごとにバラバラになったので、人月では何を買っているのか分からない。逆に「AIだから安いはず」も立証されておらず、安さの中身が「検証を省いた」なら、支払いは後ろにずれるだけ。

だから、高い人月にも、安いバイブコーディングにも、同じ3つの質問を。この人月は何をする時間か。AIをどこで使い、どう反映したか。AIが書いた部分を、誰がどう検証したか。

うちにも、聞いてください。

見積もりを、一緒に読みます。 他社の見積もりを持ち込んでいただければ、3つの質問への答えがどこに書いてあるか、書いていないかを、一緒に確認します。うちで作る場合は、AIをどこで使い、何を人が検証するかを、最初に書きます。無料相談はこちら。


出典・参考

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